1. 錯イオンの概要
1-1. 錯イオンとは
錯イオンとは、「金属元素の陽イオンに非共有電子対をもつ分子や陰イオンが配位してできるイオン」のことです。
金属元素の陽イオン:中心金属
非共有電子対をもつ分子や陰イオン:配位子
いくつ配位結合しているか:配位数
と呼びます。
錯イオンは、主に沈殿の再溶解や金属イオンの検出に関連する問題で登場します。
1-2. 中心金属と配位数の関係
中心金属の種類によって配位数はだいたい決まっています。
各中心金属の配位数の他、立体構造についても覚えておくとよいでしょう。
Ag⁺ : 2
(直線形)
Zn²⁺ : 4
Cu²⁺ : 4
(正方形)
Fe²⁺ : 6
Fe³⁺ : 6
(正八面体形)
1-3. 錯イオンの命名法
錯イオンの命名については有機化合物ルールが存在します。
例:[Cu(NH₃)₄]²⁺ : ジアンミン銅(Ⅱ)イオン
配位数 → 配位子 → 中心金属 の順に後ろから読むと覚えておきましょう。
~酸イオンということも覚えておいてください。
〇配位数の読み方
1:モノ 2:ジ 3:トリ 4:テトラ 5:ペンタ 6:ヘキサ
〇配位子の読み方
・電荷0
H₂O : アクア
NH₃ : アンミン
・電荷-1
Cl⁻ : クロリド
CN⁻ : シアニド
OH⁻ : ヒドロキシド
・電荷-2
S₂O₃²⁻ : チオスルファト
2. 錯イオン形成について
2-1. 中心金属と配位子の組み合わせ
中心金属と配位子には相性の良い組み合わせがあります。
〇NH₃(多量)
[Ag(NH₃)₂]⁺ [Zn(NH₃)₄]²⁺ [Cu(NH₃)₄]²⁺ [Ni(NH₃)₆]²⁺
〇OH⁻(多量)
[Zn(OH)₄]²⁻ [Al(OH)₄]⁻ [Sn(OH)₄]²⁻ [Pb(OH)₄]²⁻
〇CN⁻
[Ag(CN)₂]⁻ [Fe(CN)₆]⁴⁻ [Fe(CN)₆]³⁻
〇S₂O₃²⁻
[Ag(S₂O₃)₂]³⁻
2-2. 錯イオン形成による沈殿の溶解
問題文中に「多量の(過剰の)」アンモニア水(や水酸化ナトリウム)を加えるとあった場合、錯イオン形成反応を示唆していることがあります。
例:塩化銀に多量のアンモニア水を加える
AgCl + 2NH₃ → [Ag(NH₃)₂]⁺ + Cl⁻
2-3. ハロゲン化銀の判別法
ハロゲン化銀
AgF AgCl AgBr AgI
のうち、AgIを除く三種類は、多量のアンモニア水により錯イオンを形成し溶けます。
2-4. 錯イオンを用いた金属イオンの検出
- Fe²⁺ の検出
Fe²⁺ と K₃[Fe(CN)₆](ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)カリウム)を反応させると、濃青色沈殿が生成される。 - Fe³⁺ の検出
Fe³⁺ と K₄[Fe(CN)₆](ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)カリウム)を反応させると、濃青色沈殿が生成される。
Fe³⁺ と KSCN(チオシアン酸カリウム)を反応させると、血赤色溶液となる。
この血赤色は[Fe(SCN)(H₂O)₅]²⁺(ペンタアクアチオシアナト鉄(Ⅲ)イオン)によるものです。
まとめ
今回は、高校無機化学の錯イオンについて、概要と主な反応をまとめました。
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