1. 両性金属の概要
1-1. 両性金属とは
両性金属とは、酸だけでなく塩基とも反応する金属で、
Al(アルミニウム)Zn(亜鉛)Sn(スズ)Pb(鉛)が代表例です。
「ああすんなり」のごろ合わせで覚えましょう。
1-2. 反応のポイント
一般に、(H₂よりもイオン化傾向が大きい)金属は、酸と反応してH₂(水素)を発生させるが、両性金属は塩基とも反応して、H₂を発生させます。
また、両性金属はOH⁻(水酸化物イオン)と錯イオンを形成することも知られています。
錯イオンに関する知識を深めたい方はこちら(作成中)
2. 両性金属単体の反応性
2-1. 両性金属と酸の反応
- アルミニウムと塩酸
2Al + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂ - 亜鉛と塩酸
Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂
アルミニウムや亜鉛はともに水素よりもイオン化傾向が大きいため水素を発生させる。
不動態を形成するため、濃硝酸や熱濃硫酸とは反応が進まない。
〇不動態とは
Fe , Ni , Al と熱濃硫酸、濃硝酸の反応において、表面に緻密な酸化被膜が生じた状態のこと。これによって内部の金属が保護されるため、反応が進行しない。
2-2. 両性金属と塩基の反応
- アルミニウムと水酸化ナトリウム
Al + 4OH⁻ → [Al(OH)₄]⁻ + 3e⁻
2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻
電子を消去するように2つの式を足し、Na⁺を加えると
2Al + 2NaOH + 6H₂O → 2Na[Al(OH)₄] + 3H₂ - 亜鉛と水酸化ナトリウム
Zn + 4OH⁻ → [Zn(OH)₄]²⁻ + 2e⁻
2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻
電子を消去するように2つの式を足し、Na⁺を加えると
Zn + 2NaOH +2H₂O → Na[Zn(OH)₄] + H₂
上記の反応は酸化還元反応による水素の発生であり、錯イオン形成を伴います。
3. 両性酸化物の反応性
3-1. 両性酸化物と酸の反応
- 酸化アルミニウムと塩酸
Al₂O₃ + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂O - 酸化亜鉛と塩酸
ZnO + 2HCl → ZnCl₂ + H₂O
金属元素の酸化物 + 酸 → 水の発生
3-2. 両性酸化物と塩基の反応
- 酸化アルミニウムと水酸化ナトリウム
2Al³⁺ + 8OH⁻ → 2[Al(OH)₄]⁻ ・・・①
3O²⁻ + 3H₂O → 6OH⁻ ・・・②
①+②にNa⁺を加えて
Al₂O₃ + 2NaOH +3H₂O → 2Na[Al(OH)₄]
②式のO²⁻は酸化アルミニウム由来であることに注意しましょう。
このように両性酸化物と塩基の反応では、錯イオン形成が行われます。
4. 両性水酸化物の反応性
4-1. 両性水酸化物と酸の反応
- 水酸化アルミニウムと塩酸
Al(OH)₃ + 3HCl → AlCl₃ + 3H₂O - 水酸化亜鉛と塩酸
Zn(OH)₂ + 2HCl → ZnCl₂ + 2H₂O
これらの反応は中和反応です。
4-2. 両性水酸化物と塩基
- 水酸化アルミニウムと水酸化ナトリウム
Al(OH)₃ + NaOH → Na[Al(OH)₄] - 水酸化亜鉛と水酸化ナトリウム
Zn(OH)₂ + 2NaOH → Na₂[Zn(OH)₄]
錯イオン形成が行われます。
まとめ
今回は、無機化学における特徴的な金属として、両性金属についてまとめました。化学反応式が書けるようになることは、受験で化学を得点源とする第一歩です。復習を忘れず、記憶に定着させていきましょう。
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