科学的に効果が出にくい勉強法10選+代替すべき有効戦略

目次

1. なぜ“やっているつもり”の勉強法は伸びないのか?

1-1. 学習能力が伸びる条件=「思い出すこと」「生成すること」

勉強して成果を出すには、単に「読む」「見返す」ではなく、頭の中で記憶を引き出す・変換する・生成する活動が必要です。
たとえば「問題を解く」「自分で説明する」「自分で問いを作る」などがこれに該当します。

1-2. パッシブな学習法は錯覚を生む

研究レビューによると、学習者は「読み返した」「書き写した」「ハイライトした」ことで“学習した気になる”ことが多く、しかし実際の記憶定着・理解促進にはつながっていません。
この錯覚こそが「やってるのに伸びない」原因のひとつです。

1-3. 教育心理学レビューが示す”効率の悪い勉強法”

有名なレビューである Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques(Dunlosky 他, 2013)では、10種類の学習技術を比較し、

  • 高効率と判断されたもの:実践テスト(practice-testing)、分散学習(distributed practice)
  • 低効率と判断されたもの:再読(rereading)、ハイライト/下線(highlighting/underlining)、書き写し/まとめノート(summarization) など

と報告されています。
つまり、あなたが“よくやるけど伸びない”と感じている勉強法は、実は科学的に「低効率」と断定されている可能性があります。

2. 効果が高くない勉強法10選

以下、各手法ごとに「なぜ効果が出にくいか/どの研究がそう述べているか/代替すべき方法」と整理します。

2-1. 再読(繰り返し読むこと)

理由

再読は一見「理解を深めている」ように思えますが、実際には「情報が頭に残った」錯覚を生むだけで、長期記憶の定着・転移能力向上には弱いです。

エビデンス

Dunlosky 他(2013)は、再読を「低効率(low utility)」と評価しています。また、医学生を対象とした研究では「再読・ハイライト・書き写しは広く用いられているが、学業成績に対してマイナスまたは無効な影響も報告されている」ことが示されています。

代替案

「アクティブリコール(self-testing)」「間隔反復(spaced repetition)」を取り入れるべきです。たとえば「読んだ後にすぐ問題形式で問いを出す」「数日空けて同じ内容を思い出す」など。

2-2. ノートにそのまま書き写す/まとめること

理由

この手法は「受動的な書き写し」になりがちで、脳が“生成”作業を伴わないため「理解を深める」「記憶を定着させる」効果が低くなります。

エビデンス

Dunlosky 他(2013)では「summarization(まとめ)」も低効率と判断。
また、研究では学習者が書き写し・要約・ハイライトを最頻用しているにも関わらず、成績との相関が低い傾向があります。

代替案

  • 自分で「問い」を作り、それに答える形式にする
  • ノートは「要点を書き写す」のではなく「自分の言葉で説明を書き起こす」

2-3. ハイライト・下線を引くこと

理由

ハイライト・下線は「重要箇所をマーキングした」という満足感を与えがちですが、実際にはその“マーキング”だけで理解・記憶促進にはつながりません。選択した部分の理解・整理・出力がなければ無意味です。

エビデンス

最近の研究では、デジタル文章を対象にハイライトの効果を検証し「ハイライトをしてもアンダーラインなしと大差ない」結果も出ています。Dunlosky 他(2013)も「highlighting/underlining」を低効率と分類しています。

代替案

  • 読了後に「重要箇所を自分で問題化」して出題・回答する
  • ハイライトではなく、本文を読んだあと「自分の言葉で要約+説明を書く」習慣に切り替える

2-4. 丸暗記(無意味な反復暗記)

理由

テキストを繰り返すだけでは、意味処理(意味理解・関連づけ)が伴わず、転移・応用の効いた知識になりにくいです。

エビデンス

Dunlosky 他(2013)では「意味付けなしの暗記(keyword mnemonic や imagery use)」も低効率と評価されています。

代替案

  • なぜそうなるか」「どう関連しているか」を自分で説明する
  • 自作の例題・応用問題を解くことで“理解+転移”を強化する

2-5. 長時間続けて勉強する

理由

集中力・記憶効率には限界があり、長時間連続で勉強すると「疲労・注意力低下・定着率低下」が起きます。

エビデンス

学習科学のレビューでは「分散学習(distributed practice)」が高効率とされており、反対に“集中的かつ長時間”の学習(massed practice)は効率が落ちるとされています。

代替案

  • ポモドーロ法(25分集中+5分休憩)
  • 1日複数回に分けて学習/復習する
  • 「短時間・頻度高め」で“分散学習”を意識する

2-6. 多くの参考書を転々とする(参考書ジプシー)

理由

「いろんな教材を少しずつ」では“浅く広く”になりがちで、どれも中途半端になってしまいます。深い定着には「一冊を使い込む」ことが有効です。

エビデンス

複数教材を浅く使用することが学習効率を下げる可能性があるという報告が、大学生の研究でも示されています。

代替案

  • 1教材を「完結+深掘り+演習付き」で使い切る
  • 教材変更は「1を完了してから次へ」が基本

2-7. 勉強環境を整えることだけに注力する

理由

環境整備(机・照明・静音など)は確かに重要ですが、それ単体では得点アップには直結しません。環境整備後の“実践活動”が鍵です。

エビデンス

レビューで「環境を整えただけの学習強化策」では、記憶定着や理解深化にはあまり寄与しないという指摘があります。

代替案

  • 環境整備→「すぐ演習を始める」
  • 環境を変えると同時に「問いを解く・出題を作る」活動をセットにする

2-8. 勉強開始前に「やる気が出るまで」待つ

理由

“やる気が出るまで”という待機が「先延ばし」の原因になるケースが多いです。行動を始めることでモチベーションが後から出ることも研究で示されています。

エビデンス

学習行動研究では「行動を先に始める」が重要という報告があり、待機主体の行動形成は非効率です。

代替案

  • ミニ習慣(1分だけ始める)
  • タイマーを使って即スタート+短時間集中

2-9. グループ勉強でダラダラ話すだけ

理由

「一緒に勉強する」は良いですが、目的・構造が無ければ“雑談”になり効率が下がります。説明・出題・振り返りが無いと学習効果が薄れます。

エビデンス

説明や問い作成を含む学習活動(self-explanation/practice testing)は中〜高効率とされる一方、ただ話すだけ/聞くだけは低効率とされます。

代替案

  • グループ学習を「出題者 + 解答者」形式に
  • グループで交互に説明し合う(生成活動)

2-10. “過去問を解かずに”参考書を1回やるだけ

理由

試験形式でない学習だけでは、本番の「出題形式」「制限時間」「問いのクセ」に慣れず得点に直結しにくいです。

エビデンス

学習科学では「模擬試験形式での練習(practice testing)」が非常に高効率とされており、形式を意識しない学習は効果を下げると報告されています。

代替案

  • 毎週1回は過去問形式の演習
  • 制限時間+採点+振り返りまで含める

まとめ

あなたが“やっている割に伸びない”と感じる勉強法には、受動的/浅い/反応がないという共通点があります。
逆に、伸びる勉強法は「能動的/生成的/出力を伴う」もの。
今すぐ「再読・ノート書き写し・ハイライト」から脱却し、問題を解く・問いを作る・思い出すという活動に切り替えましょう。

科学的に効果が高い勉強法についてもっと体系的に学びたい方は、こちらの総まとめ記事

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参考資料

・Dunlosky, J., Rawson, K.A., Marsh, E.J., Nathan, M.J., & Willingham, D.T. (2013)
 Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques.
 Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.

・Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008)
 The Critical Importance of Retrieval for Learning.
 Science, 319(5865), 966–968.

・Roediger, H. L., & Butler, A. C. (2011)
 The critical role of retrieval practice in long-term retention.
 Trends in Cognitive Sciences, 15(1), 20–27.

・Mayer, R. E. (2004)
 Should There Be a Three-Strikes Rule Against Pure Discovery Learning?
 American Psychologist, 59, 14–19.

・Blunt, J.R., & Karpicke, J.D. (2014)
 Learning With Retrieval-Based Concept Mapping.
 Journal of Educational Psychology, 106(3), 849–858.

・Willingham, D. T. (2009)
 Why Don’t Students Like School? A Cognitive Scientist Answers Questions
 That Matter in Classroom.

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